補習校校長が考える、補習校のできること・できないこと

こんにちは、海外在住子女専門国語塾のジョンソン綾です。

「のびのびと海外生活を楽しみながらも、帰国後の進路を見据えて、しっかり実力を身に付けていたい」そんな希望をもつ小中学生のお子さんの、すべての教科の基礎となる国語力を伸ばすべく、一緒に国語の授業をしています。

超少人数の塾コースと、マンツーマンの家庭教師コースとを、塾長自らが担当しております。

今日は、静岡県の小中学校で14年半勤めた経験と、アメリカの日本語補習校にて数年、担任・副教務主任・校長として勤めている経験から見た、補習校でできること・できないことについてお伝えしたいと思います。



補習校のリアル その1: 日本人同士の心の居場所作り


海外でがんばっているお父さん、お母さん、子どもたち…。母語が日本語なのに、周囲で話されるのは英語や別の言葉。

細やかな気持ちを伝えやすいのは日本語で、現地語で何か言われても、うまく言い返せなくて悔しい思いをした…。そんな経験をしたお子さんもいることでしょう。

日本語補習校は、日本語で学習をしたり、日本語で遊んだりする場所です。だから、日本語の方が得意な子にとっては、よりその子らしくいられる素晴らしい居場所の一つでしょう。

日本で生まれ育ったAさんというお子さんがいました。彼女は、理科と算数が大好きで、日本の学校では、バンバン自分の考えを発表するようなとても積極的なお子さんだったそうです。しかし、現地校では、言いたくても英語でうまく言えない…。学校では、なんとなく笑ってやり過ごすも、なんだか疲れてしまっていたそうです。

そんな彼女でしたが、1週間に1回補習校に通うようになり、授業中に発言できるようになり、休み時間に思いのまま自分の気持ちを伝えられるようになると、すぐに、いきいきとしてきました。

彼女にとっては、補習校はとても良い心の居場所となりました。そして、彼女は、現地校でも少しずつ、本来の彼女らしさを出せるようになってきたと、おうちの方から伺いました。

自分の言葉で思い切り自分を表現できるって、とても気持ちのいいことですよね。日本語の方が得意なお子さんにとっては、1週間に1回、同じ場所で、同じ子たちと、日本語でやり取りをするというのはとてもいい息抜きになるかと思います。






補習校のリアル その2: 授業レベルは変えざるを得ない





「日本のカリキュラムで、日本と同じ授業が受けられる」と、補習校についての記述でよく見られますが、実際のところは… 「日本の教科書を使って授業が進むけれど、日本と同じレベルの授業にはならない」の方が近いように思います。

日本の小中学校では、日本語を母語とするお子さんが圧倒的多数を占めます。一方の授業補習校では、家庭での共通語が日本語のお宅のお子さんと、片方の親とは日本語、もう片方とは別の言葉で話すお宅のお子さん、家族みんなでの団らんは全て別の言葉でというお宅のお子さんなど、家庭での言語環境はさまざまなお子さんがいるのが実情です。

例えば、「おままごと」という言葉一つをとっても、その言葉を聞いてサッと頭の中で「お母さん役の子と赤ちゃん役の子と犬役の子がいて…」「幼稚園のとき、よくやったっけな。」などと、想像できるお子さんと、そうではないお子さんがいます。

「おままごと」「おにごっこ」「こたつ」など、生活言語の一部として普通に通じる言葉を理解できる子とそうでない子がいて、そうでない子が1/4以上を占めている中で、「どの子も置いていかない。」「どの子にも分かるように。」とすると、どうしても授業中に、子どもたちに問いかける発問(授業で子どもたちに問い掛ける質問)の内容は、日本の学校と海外の補習校とでは変えざるを得ません。






小学3年生の教科書にある「すがたを変える大豆」という説明文には、「に豆」「くふう」「植物」といった言葉が出てきます。これらの言葉の意味を理解しない子たちが多いときには、そういった言葉の説明をしたり、想像しやすくするように文章を図式化したりします。

ただ、その分、限られた時間の中で、「説明の順番を入れ替えてもいいのか。」といった、長文読解そのものや、自らが作文を書くときのキーとなる発問(子どもへの質問)をすることで、子どもたちにじっくり考えさせるというのはちょっと難しいのかなと感じています。

日本の学校にいたときは、「この中で、1番姿が変わった食品はどれ?」「説明の順番を入れ替えてもいい?」といった発問をたくさんしながら、子どもたちの思考をガンガンうながしていたのですが、補習校では、少し授業のスタイルを変えました。






補習校のリアル その3: 先生たちはいい人ばかり

最後に、オマハ日本語補習校の先生たちは、人格的に素晴らしい方ばかりです。

「子どもがお世話になっているから。」「教員不足で困っていると聞いたから。」「子どもが好きだから。」…  補習校にお勤めいただく理由は人それぞれなのですが、どの先生も、「私もこうなりたいな。」「こういうところ、真似したいな!」と思わせてくれる方ばかりです。

上の写真のような「運動会」といった行事一つとっても、皆さん、とても協力的に、しかも臨機応変に動いてくださいます。先生方がいなかったら、どの行事も、日常の授業も成立しません。

決して高いお給料を提示できないのを、常々申し訳なく思っているのですが、皆さん、子どもたちのために貴重なお時間、お力を貸してくださっています。

そんな素敵な「日本から来た、家族ではない大人」と週1回、定期的に関われることは、海外生活を過ごす子どもたちにとってはとても有意義な出会いであるのは想像に難くありません。






まとめ


以上、私の考える補習校のできることは、心の居場所が作れることと、日本人の家族以外の大人の方と出会えることで、難しいことは、「日本と同じ授業が受けられる」ことでした。

最後になりましたが、今日の記事は、あくまでも、アメリカの片田舎に住む、一個人の見解であることをご了承くださいませ。また、私は、日本語運用能力の異なる子たちが「日本語」という切り口で共に学ぶということについては、素晴らしいことだと思っています。

補習校で、ご家庭によって大きく異なるニーズをどう切り盛りしていくかは、他校や校内の先生方とも協力しながら、どの子にとっても良きようにとこれからも考え続けていきたい課題です。

のびのび進学塾じょんじょんでは、日本でのトップ校進学を目指しながらも、現地での生活をのびのびと楽しみたいお子さんたちと共に授業をしています。海外在住であることを加味しながら、子どもたちに身に付けさせたい、語彙力・読解力・作文力・論理的思考力を育てるカリキュラムを組んでいます。同じ志をもつお子さん・おうちの方とのご縁を楽しみにしています。






* SNSでは、「教育」全般について発信しています。
↓ インスタグラム
https://www.instagram.com/nobinobi_shingakujuku_jonjon/

↓ Facebook
https://www.facebook.com/nobinobijonjon

↓ アメーバブログ
https://ameblo.jp/ushi1ban/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です