帰国子女枠の私立中学校入試、どう作文を書けばいい?

東京都の私立中学校の帰国子女枠の入試で出題される作文のテーマは、一般的な作文よりも帰国子女の経験や国際的な視野を重視する傾向があります。

具体的には、以下の5点についてのテーマがよく見られます。



1 異文化体験について
「外国で生活して学んだことを、日本社会でどう生かしていきたいか」
「海外での生活を通して感じた、日本との違いについて」



2 自分の将来の目標について
「将来、日本や世界にどのような貢献をしたいか」
「自分が大切にしている価値観と、それを実現させる方法」



3 帰国後の日本社会での適応について
「日本に帰国して感じた難しさや、そこで学んだこと」
「帰国子女として日本の学校で活かせる自分の強み」


4 グローバルな視点から見た課題
「環境問題や国際問題について、海外で学んだ視点から日本に提案したいこと」
「世界での経験を踏まえ、これからの日本社会に必要だと思うこと」



5 自分を表現することについて
「自分らしさとは何か、また、それをどのように表現していくか」



といったテーマがよく出題されます。

帰国子女枠で合格した子たちに学校側が期待していることは、海外での経験や異文化理解力、適応力などを学校生活で活かして、日本で生まれ育った子たちに、新たな視点や気付きを与えることです。

「この子が本校に入学してくれたら、どんなに素敵な化学反応が起きるかな?」そんな気持ちに、採点者がなれたら、きっとその子は合格するでしょう。







そこで、これらのテーマに基づいて、自分の経験を踏まえた具体的なエピソードや考え方を伝えることが大切になってきますが、これはテクニックを磨くことで対応することができます。

のびのび進学塾じょんじょんでは、以下の3点を意識して書くよう指導しています。


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① 構成は「はじめ・中・終わり」で。
② 自分の経験やエピソードは具体的に。
③ これを読んだ読み手の気持ちは?

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もちろん、これらの3点に加えて、原稿用紙の使い方や、字数、文体、誤字・脱字など、基本的なことも子どもたちと確認しています。

「思ったより簡単そうだ。」
そんな風に感じませんでしたか?

そうなんです。「私立中学校入試の作文」と聞くと、
身構えてしまいがちですが、内容や書き方は、いたってシンプルです。

ここで、上記の3つについて、より詳しく説明したいと思います。




1 構成は「はじめ・中・終わり」で。

「初めに結論を書き、中にはそれを裏付ける具体的なエピソードや考え、終わりにはまとめを書こうね。」というシンプルな指導をしています。

例えば、作文のテーマが「住んでいた国の素晴らしいところ」だったとしたらこんな風に書きます。




「住んでいた国の素晴らしいところ」


   アメリカに5年間住んでいて、特に素晴らしいと思ったのは、道で知らない人同士でも気軽にあいさつを交わす習慣です。


   初めてそれを実感したのは、引っ越して1週間も経たないころでした。母と家の近くを散歩していたとき、見知らぬおばあさんが、”Hello!”と声をかけてきました。とても驚き、「私に言っているのかな。」と戸惑いましたが、すぐに、アメリカではこうしたあいさつが当たり前だと気が付きました。その後、少しずつ私も、知らない人にもあいさつを返すようになりました。ある日、勇気を出して知らない人に”Hello.”と言ってみたところ、その人は笑顔で”Hello!”と返してくれました。その瞬間、心が温かくなり、自分がアメリカの人とつながっているという実感がわきました。


   アメリカでは、知らない人とのあいさつが、心のつながりを作る大切な一歩だと学びました。日本でも、友だちや先生、さらには周りの人たちに自分からあいさつをして、良い関係を築いていけるような人でありたいと思います。





「はじめ」… アメリカで素晴らしいのは、知らない人同士でも挨拶をすること

「中」…  こんなことがあって、私はこんな気持ちになった!

「終わり」… それを踏まえて、私はこれからこうしたい!



どんなテーマが来ても、「はじめ・中・終わり」の構成は普遍的に使うことができます。

そこで、どんなエピソードを持ってくるか、どんな言葉を選ぶかといったところは、事前に戦略的に一緒に考えておくことが大切ですが、それを書き出す作業は、とてもシンプルです。



2 自分の経験やエピソードは具体的に。

いいことを言っているんだけど、なんだか心に響かない。そんな文章を読んだことはありませんか?

それはおそらく、頭に情景が浮かぶような具体的なエピソードがなかったり、その人自身がそこまでそのトピックに情熱をもっていなかったりするためでしょう。

先ほどの「住んでいた国の素晴らしいこと」を、ChatGPTに書くようお願いしました。条件は4つ出しました。380字以上400字以内で、かつ、語彙は小学校の国語の教科書に載っているような平易なもので、「アメリカであいさつの重要性を知った」という内容で、さらに、難関私立中学入試に合格できるくらいのレベルで、という条件です。

以下は、ChatGPTが書いてくれた文章です。





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   アメリカでの生活を通じて、私は「あいさつの大切さ」を学びました。アメリカでは、知らない人同士でも、目が合うと「ハロー」と笑顔であいさつを交わすことが多くありました。この経験から、あいさつは相手を尊重し、良い関係を築くための第一歩だと感じました。

   この学びを日本社会でも生かしていきたいと思います。日本ではあいさつを交わすことが習慣ですが、時に形式的になりがちです。私は、心をこめたあいさつをすることで、相手との距離を縮め、より良い人間関係を築くことができると考えています。あいさつを通じて、多くの人々とつながり、温かい社会を作ることに貢献したいです。

(字数:397字)


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テクノロジーの素晴らしさに驚嘆するのですが、そして、有り難みもとてもよく感じるのですが、さらに、ド正論を言っていてぐうの音も出ないのですが、この文章に「正しさ」は感じても「魅力」は感じません。

なぜかと言うと、この文章には、その子の気持ちの変化やその子らしい成長を感じないからです。

そうですよね。だって、もともと「ない」んですから(笑




子どもたちに「作文を書きましょう。」と話すと、慣れていない子たちは、こうした「正論的」作文に走ってしまいがちです。

もちろん、それは、その子のもつ優しい心や正しくあろうとする心がそうさせているだけであり、そういった心をもっていることはとても素晴らしいことです。

だからこそ、少しのテクニックを教えて、よりその子らしい文章が書けるようになり、見知らぬ人にもその子らしさが伝わってくるようになったら、こんなに嬉しいことはないですよね!!





3 読み手の気持ちを考える。



作文を読むのは、採点者である、その学校にお勤めの先生です。AIではなく、人間です。

また、似たような作文を、何百回も読んだことのある人間です。さらに、その学校に何年もお勤めで、その学校や生徒たちに愛着のある方です。

そんな方は、次年度、どんな子に入学してほしいのでしょうか。





私が、その学校に勤めている教師であれば、その子が入学することで、なんだか次年度への希望が広がるような子に入ってほしいです。

だからと言って、「今のその子とは別人になれ。」とか「いわゆる『いい子』になれ。」というわけではありません。




しかし、どの子にも、その子らしい素晴らしい特性があります。

それを存分に生かして、共に、より良い学校を作っていきたい、私が私立学校の教師であれば、そう感じていることでしょう。

だからこそ、作文には、「その子らしさ」を垣間見たい、そんな先生方の気持ちが聞こえてきます。




まとめ

今日は、帰国子女枠の私立入試でどのように作文を書けばいいかについて書きました。

入学試験も、人と人との出会いです。

その子のもつ素晴らしさが、まだ見ぬ先生方に伝わるような文章を書くことができるよう、これからものびのび進学塾じょんじょんは支援していきたいと思います。


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