海外在住にして、公立中高一貫校受験はどう対策する?
静岡県の小学校に勤務していたとき、中高一貫校を受検して合格していったお子さんを何人か見てきました。
当時は公立小学校に勤めていましたから、受検対策を授業の中ですることは全くありませんでした。
そんな子たちと毎日、一緒に授業をしたり会話をしたりした中で感じたことは、彼ら・彼女らは、その知識の多さと論理的思考力の高さゆえに、合格できたのだろうなぁということです。
色々なことに興味をもち、知っているだけでなく、その知っていることを活かして「自分ならどう考える?」という視点をもったお子さんたちでした。
私立中高一貫校は、従来のように、科目ごとにその知識や正解を問うスタイルが多く、事前の対策がしやすいと言われています。
一方の公立中高一貫校は、さまざまな教科で得られる知識を教科横断的に用いて、どう思考したか・どう表現したかを問われるスタイルです。
そのせいか、「5年生くらいからの通塾でも間に合う子がいる」と言われる一方で、「画一的な対策をすることが難しい」とも言われているようです。
今日は、海外在住にして中高一貫校受検をしたいお子さんが伸ばしたい、3つの力についてお伝えしたいと思います。
1 まずは知識を増やす
一部の私立入試で問われるような学習指導要領から逸脱したマニアックな知識は必要ありません。
公立入試なので、小学校6年間の教科書に載っているような事柄の知識があれば、問題は解けます。
令和6年度の静岡県立高等学校中学部の総合適性検査でこんな問題がありました。
食塩を水に溶かす実験結果を見て、水溶液が溶けている食塩の一部を取り出すにはどうすればいいですか?
「実験用ガスコンロ」「蒸発皿」「金あみ」「ピペット」という言葉を用いて説明しましょう。
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/031/858/reiwa6nendosougoutekiseikensa1.pdf
この問題を解くのに必要なのは、まずは、「実験用ガスコンロ」「蒸発皿」といった言葉とそれらの使用用途を知っていることです。
これらを知らないことには、この問題はもはや外国語。お手上げ状態となってしまいます。
ですから、小学校で習うような知識の習得は、公立中学受検に取り組むための基礎となります。
そんな基礎知識を海外で身に付けるのに助けとなる3つのものを紹介します。
一つ目は、NHK for Schoolです。
さまざまな教科の知識を、短い動画の中でたくさん学ぶことができます。
私自身も、補習校やのびのび進学塾じょんじょんの宿題の中で、番組を見た後に答えるオリジナル問題を宿題に出すこともあります。
特に、「歴史にドキリ(歴史番組)」「社会にドキリ(都道府県に関する番組)」、知識の定着を図るための「ふしぎだいすき(3年生)」「ふしぎ大調査(4年生)」、「ふしぎワールド(5年生)」、「ふしぎ情報局(6年生)」は、番組構成がとてもよくできていて、知識を増やすだけでなく、作文力を鍛えるための教材としてもよく活用させてもらっています。
https://www.nhk.or.jp/school/
二つ目は、NHKプラスで見られる、大人向けの番組です。
「クローズアップ現代」や「NHKニュース」、「はたらく細胞」など、大人が楽しむような番組を、がっつり見るのではなく、なんとなく聞いている、それだけでも情報は入ってきます。
教科書から得る知識も素晴らしいですが、子どもが納得感をもって学ぶのは、それ以外のところからもたくさんあるように思います。
何気なくテレビで見たスポーツ選手に憧れをもち、その競技をやってみる中で、その楽しさを知り、それを将来の職業選択に生かした。
そんなお子さんも、今までたくさん見てきました。
また、私の弟は、机上での学習を嫌い、いわゆる底辺校と呼ばれる高校を卒業しましたが、健康系、科学系、社会の動きなど、すべての知識をテレビから得ており、私も彼の知識量の多さにうなること、助けてもらうことがたくさんあります。
最後に、進研ゼミです。
「お〜い、自分の塾の宣伝じゃないんかい!」とツッコミが入りそうですが、進研ゼミは、隅から隅まで授業オタクの視点から読むと、本当にとてもとてもよくできている教材です。
子どもに分かりやすい言葉選び、その絵や写真を選んだ製作者の意図が自然と伝わってくるような、そのシンプルさ。
どこを見ても、「くぅぅ〜、さすがは、子どもの通信教育に情熱を傾けてきた会社さんだな。」と、教育者の視点からとても良い学びになることばかりです。
ただ、「実験用ガスコンロ」「蒸発皿」などは、日本の小学校では実際に手に取って、それを実験したり確かめたりする機会があるのですが、通信教育のみでは、それが「机上の知識」で止まってしまうことが唯一の難点かと思います。
それはどの通信教育でも弱点となっていますが、それでも、進研ゼミさん、とても素晴らしいです。
ただ、これは、現地校でも似たようなことは学習しますので、そこで補うこともできます。
2 読解力を伸ばす
当然のことですが、テスト問題は、文章で書かれています。しかも、受検者の子どもたちにとっては、初見の文章です。
しかも、中学入試の文章ですから、問題が進むにつれて、文の量も多くなってきます。
問題を解くには、そこまでの問題文を読み、そこに描かれた表や写真の意味や意図を読み取り、自分で考えることが必要です。
つまり、自分で考え始める前に、「何を問われているか」「データはどんなことを示しているか」「データから考察できることは何か」といったことを読み取る必要があります。
その中で必要になってくるのは、やはり、そこに描かれた図表の意味や意図も含めたその文章の内容を読み取る力、読解力です。
知識を得るのはそこまで大きな労力は要りませんが、読解力を伸ばすには、多少の努力と能動的な学習が必要です。
のびのび進学塾じょんじょんでは、学年の発達段階に合ったさまざまな文章を読み、子どもの興味・関心や理解度、海外在住であるという環境を考慮しながら、教えるところはきちっと教え、考えさせるところは子どもに合った質問を投げ掛けて考えさせることを繰り返しながら、子どもたちの読解力向上を図っています。
「A。しかし、B。」という文章では、本当に筆者の言いたいことは、AとBどちらだろうか。
Bならば、Aは、必要ないのではなかろうか。
そんな質問を子どもたちに投げ掛けながら、子どもたち自身が、接続詞「しかし」の役割に気付いたり、それぞれの文の役割について理解したりする中で、子どもたちが主体的に、文章の汎用的なルール(型)を身に付けていけるよう、じょんじょんでは支援しています。
また、「海外で読解力を伸ばすには?」といったタイトルでブログ記事も書きました。
「海外在住」といった視点で、おうちでできる声掛けがたくさん書いてあります。
・ 海外で、読解力を伸ばすには(低学年編)
https://nobinobijonjon.com/learning/323/
・ 海外で、読解力を伸ばすには(中学年編)
https://nobinobijonjon.com/learning/344/
・ 海外で、読解力を伸ばすには(高学年編)
https://nobinobijonjon.com/learning/348/
3 作文力を伸ばす
必要な知識を得て、問われている内容や与えられた情報を理解できたら、あとは、それをアウトプットするだけです。
つまり、入試では、答案用紙に自分の考えを順序立てて書き出すという作業で終わりです。
一言で説明するとこうですが、なかなか「言うは易し。行うは難し。」の世界ですよね。
「じょんじょんでは…」とお話ししたくなってしまう気持ちをグッと堪えて、おうちでできることを3つほどお伝えしたいと思います。
一つ目は、親子で同じ本を読んで、それについて語り合うことです。
子どもは、読んだ内容は覚えていても、それを自分の言葉で順序立てて説明したり表現したりすることは難しい場合があります。
そのため、自分の考えを表現する機会を、こちらが意図的に与えることはとても有効な方法です。
「この本のどこが1番心に残った?」「それはなぜ?」といった会話の中で、少しずつ、自分の思いや考えをアウトプットしていき、子ども自身が自分の考えに気付いたり、「こう言えば伝わるな。」という実感を得たりする中で、表現力を磨いていってほしいなと思います。
二つ目は、物語の続き話を親子で作ることです。
二人で一つの続き話を作ってもいいし、それぞれが別々に続き話を作って後から読み合うのも、とても楽しい活動です。
作文力を鍛えるには、やっぱり、実際に手を動かして書くこと、少しずつ慣れていくことがとても大切です。
こういった活動は、何年経っても覚えている子もいます。こうした時間が、子どもが大人になったときの、家族の楽しい思い出の一コマとなりますように。
最後に、親子で交換日記をしたり手紙を書き合ったりすることです。
以前、アメーバブログにて記事を書きましたが、朝早くから仕事に出掛け、帰りも遅いお父さんとの交換日記をしていたお子さんの作文力はとても素晴らしいものでした。
https://ameblo.jp/ushi1ban/entry-12832072131.html
彼女は書くことそのものへの抵抗感はなく、彼女の文章を読み、「そういう表現の仕方を小学生もできるものなのか!」と驚いたことは1度や2度ではありません。
先日、日本へ里帰りした際に、イオンですみっコぐらしの交換日記帳を見付けました。
思いの外、2年生の長女も興味を示し、「やってみたい」と話していたため、我が家でもちょっとずつやってみることにしました。
長女はしっかり者の几帳面、私はうっかり者でおおらかなので、私の性格を考えると「毎日」とはいかないかも知れませんが、これも親子の楽しい思い出の一つになるかもしれないととらえて、ぼちぼちやってみたいと思いました。
まとめ
海外在住からの公立中高一貫校受検をする場合には、知識を増やし、読解力を高め、作文力を磨くことが大切だと、今日はお伝えしました。
日本帰国後の進路が、どの子にとっても、その子らしい素晴らしい道となりますように。