海外在住、宿題漬けでなくとも、国語力は伸びる

「補習校に通うと宿題がどっさり出て、現地校の宿題や習い事、遊びとの両立が難しい。」といった声は、渡米前からよく聞いてはいました。
私は、「子どもにはボーッとする時間が必要だ。」「詰め込まれることより、自ら学ぶことをする子の方がずっと後伸びする。」と考えています。
そういった私自身の考えと、長女が現地校に慣れるのを優先したのと、本人が補習校に行きたがらなかったのとで、補習校には通わせませんでした。
おかげさまで、彼女は、現地校での生活をのびのびと楽しんでいます。
あまりにものびのびしたせいか、長女は、最近になって「日本語の本を図書室で自分で選んで借りたい。」と言い出し、補習校で私が担任しているクラスに通い始めました。




私自身は、「本帰国しても、子どもたちには、自分の興味・関心のあることを思う存分学んでほしい。」と願う一人の母親であり、「そのためには、高い語彙力・読解力・作文力・論理的思考力は、その子の大きな武器になる。」と考えている一人の教育者でもあります。
静岡県版カリキュラムを作成したり、何度も教職員向けの授業公開をしたりして、子どもの力を伸ばす方法について考え続けてきた私なら、宿題漬けになりたくないけれど国語力はしっかり伸ばして帰りたいという子どもたちの希望に寄り添えるのではと、のびのび進学塾じょんじょんを開校しました。




そんな私が「勉強漬けでなくとも、国語力が伸びる」と考えるのには理由が二つあります。


1 学ぶことを楽しめたら、それは「勉強漬け」ではなくなるから。



本来、子どもにとって新しいことを学ぶのはとても楽しいことです。
けれど、それを楽しめないのは、本人に学ぶ必要感を感じられなかったり、そもそもそれがそのときの本人にとっておもしろくなかったりするからです。
子どもの頃とてもつまらなかった英語学習が、大人になった今、ちょっと楽しみながらできてる、そんなことはありませんか?



海外在住での漢字学習。日本語での読書が好きでなければ、普段の生活にはほとんど使われないため、子どもたちが学習する必要感を感じることはとても難しいものです。
「帰国したときに、漢字の読み書きができないと困るから!」といった論理を頭でしっかり理解して、心でも納得している子はいいのですが、多くの子は、基本的に、未来ではなく「今」を生きています。
そのため、少なくない海外在住の子どもたちにとって、漢字学習が苦行となってしまっている現状があるようです。
実際、我が家も、「長女に合ったやり方」を見つけるまではたくさんの試行錯誤をし、四苦八苦しました。



けれど、学ぶ内容そのものを好きになったり、学び方・学ぶ過程が楽しくなったりしたら、それはもう「勉強漬け」ではなく、子どもにとっては楽しいことをしているといった状態になります。
我が家の長女は、自分の意志に反して何かをさせられることをとても嫌う子どもです。
また、全米で行われているMAPテストのスコアを見ても、「もっとがんがんやれば、ぐんぐん伸びていくポテンシャルはあるのにな。」と思うことはあります。
けれど、今の彼女の現状としては、「第2言語として身に付けた英語を使って、現地校での生活を目いっぱい頑張っている」という状況です。



そんな中で、彼女に合わないこと、彼女の嫌うことを、私はさせたくないと考えました。
結局、「大人やお兄さん・お姉さんといった、自分より年上の人に勝てることが、ちょっと嬉しい」という小学生の子どもたちの特性を生かして、漢字を通して親子で対決するという方法が、彼女には合っていたようでした。

(5分間で、何個読めるかを親子で競います。初めは、私や主人の方がたくさん読めるのですが、だんだん、長女も読める数が増えてきて、4〜5日経つと、逆転されてしまいます。それが、彼女にとってとても大きな喜びとなっているようです。)

(漢字カルタも楽しくやっています。性格的に、私は手加減するタイプ、主人は誰が相手でも本気でやるタイプです。長女は、気分によって、対戦する方を無意識的に選んでいるようです。)



そんな風にして、親子で試行錯誤をして、今はこのスタイルに落ち着きつつあります。
けれど、子どもは日々成長しています。
今合っているやり方が、1年後も合うかは分かりません。
子どもの成長に合わせて、少しずつ手を替え品を替え…と、私自身も少しずつ進化していきたいなと考えています。



2 読解や作文にも「型」があるから。



なかなか日本の小学校では、「型」を教わることは少ないように感じます。
子どもの頃、作文の授業で「自由に書いてごらん。」と言われることが多かったのですが、生まれ持った「センス」のない私にとっては、「どう書けばいいんだ。」「トピックは決まったのに、どう展開していいか全く分からない。」と途方に暮れることがしばしばありました。
補習校の授業でも、「作文」が宿題に出ることがありますが、その書き方を丁寧にトレーニングしてくださる先生は、あまりいなさそうです。
(これは、補習校の先生方の課題ではなく、体制の課題です。先生方は、「たった40日ほどしかないけど、1年間分の授業をせねば」「教えた経験はないけれど目の前の子たちのために」と頑張ってくださる真面目で優しい方ばかりです。)




のびのび進学塾じょんじょんでは、「教科書教える」ことではなく、「教科書教える」ことをしています。
教科書の内容をただ教えるのではなく、私自身が、教科書から子どもに身に付けさせたい力を読み込み、目の前の子どもがそれを身に付けるにはどんなアプローチが有効かと考えています。
その上で、文章の読解や作文の型を子どもたちに教えたり、子ども自身が気付けるような声掛けをしたりしています。
ですから、その時々の授業は、その場にいる子どもの興味・関心、能力、実力、言語環境によって、アプローチや質問の仕方が変わります。
変わらないのは、目指すゴール(身に付けさせたい力)だけであり、そこへの行き方(アプローチの仕方)は、子どもの数だけあります。




例えば、1年生の1学期の終わりには、絵日記を書けるようにしたいというゴール(身に付けさせたい力)があります。
「自由にどうぞ」「教科書の絵日記を参考にしてごらん。」で行けるお子さんは、それでOKです。
けれど、そうではないお子さん、より作文力を伸ばしたいお子さんは、型を知り、トレーニングを重ねることで、飛躍的に伸びていきます。
それは、入門期の1年生でいうと、「概要・詳しく・気持ち」という流れの型です。




1 概要 … 書いて伝えたい出来事を一言で表す。
(例)5月26日に、わたしは、オマハの くうこうから ひこうきに のって、日本に かえりました。




2 詳しく … 概要をより詳しく書く。1年生の場合は、1文でもいいし、2文、3文でもOK!!
(例)ひこうきの なかは、あまり ゆれませんでした。いつもは あまり 見られない えいがを たくさん 見られました。



3 気持ち …. 思ったことを書く。
(例)いもうとも とても うれしそうでした。わたしも とても たのしかったです。




これは長女が初めて書いたものですが、こんな風な型にはめて書いていくと、1年生でも意外と作文が書けます。
学年ごとに必要な力があり、型を知り、トレーニングを繰り返していくことで、6年生になったとき、もっともっと複雑でその子らしい文章が書けるようになります。
読解にも作文にも、そういった「型」があり、それを効率よく学んでいくことで、どの子も少しずつ力を伸ばしていっています。




まとめ

海外に住んでいても、「勉強漬け」にならなくても、日常会話としての日本語ではなく、学習に使う言語としての日本語力(読解力や作文力)を伸ばすことは可能です。
ゴールへ向かう過程を楽しむこと、読解や作文には「型」があり、その便利さを子どもに気付いてもらうことができたら、きっと、今歩む道のりも、帰国後の道のりもその子らしい楽しいものになるのではないかと考え、日々の授業をしています。
ご縁のあるお子さん、保護者の皆さまとの出会いを楽しみにしています。

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